秋冬春夏(完結)
6
「今日ね」
並んで家路を進みつつ、おもむろに純が口を開く。
「先輩が、お前がゲイなんじゃないかって、噂が立ってるぞって」
「は?」
キヨカズはビックリして、純を振り返る。
「なんでそんなことに」
純は楽しそうに笑っていた。本人が嫌がってないなら心配することもないが、どこからそんな話になったのか気になる。
ただ、先日キヨカズが松田氏に会ったことがきっかけのような気がする。
「キヨカズが松田に会ったでしょう」
やっぱり。
キヨカズの反応に、純がいやいや、と返す。
「松田が僕の引き取り手が見つかったことと、それがイケメンだったことに興奮したらしくてさ」
時折イケメンと言われるもののあまり自覚はない。その理由の一端は、純の存在だ。
「お友達と思われるイケメンが引き取ってくれました!って、先輩に言ったらしい」
「そう……」
「本当はみんな、彼女が出てくると思ってたから、期待はずれだったみたいだね」
話が面白くならなかったので、そこで捻りが入ったということらしい。
そういう流れになる気持ちはわからないでもないが、純がどんな反応をしたかが気になってくる。
「あんまり面白かったから笑ってるうちに話が終わっちゃった」
どれだけ面白い話に仕立て上がっていたか、ここまでの説明ではキヨカズには想像もできない。
やがて、恋人だって言ってみようかな、などと言うので、さすがに止めた。
止められて、純はきょとんとする。
「この前愛を告白したから、恋人になったんだよね?」
あまりにも嬉しそうな笑顔にやられて、キヨカズは前と同じ台詞を言った。
「私はあなたの虜です」
純は満足そうに頷いて、自宅に続く階段を登った。
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