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秋冬春夏(完結)
2
松田が怯えていた役員説明の日だ。
説明は彼に任せるにせよ、久我も同席しなければ彼は緊張しすぎて実力を発揮できないだろう。
午前中のそれが終われば今日は運よく重要な予定がない。

半日休暇で診療所に寄って帰ろう。
久我はそんな予定を立てた。

すっかり緊張してガチガチの松田は見ていて面白い。
そんな気持ちで久我が微笑んでいたので、役員たちもわりと温かい目で見てくれたようだ。
結局久我は少々の補足説明をしただけだった。

会議室を出ようと立ち上がったとき、ものすごく体が重いことに気が付く。
先を行く松田を追う足が、動かない。
会議室を出たところで、松田が振り返った。

「久我さん?」

それは久我の耳にも届いた。
ただ、返事はできなかった。

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あきゅろす。
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