秋冬春夏(完結)
1
近頃キヨカズが、朝起きて見送ってくれるようになった。
なんとなくいつもより重い体を動かして玄関を出ようとすると、気配がする。
寝癖でぐしゃぐしゃの頭。
「顔色悪くない?」
「少しダルいかも」
気だるげに腕が伸びてくる。
頬をぺたりと、大きな手が押さえる。
「気を付けて」
穏やかな、と言うよりは眠そうな一言に送られて、家を出た。
純が出ていってから、布団に入り直す。
ふと、純の体温が手のひらに甦った。
いつもひんやりとしているはずの頬が、少々温かいようだった。
ヘッドボードの携帯をとる。
具合悪いなら、無理しないように。
メッセージを送り、枕に沈む。
心暖まるメッセージありがとう。
混雑電車のなかで純が送った返事は、携帯電話が預かったままだ。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!