秋冬春夏(完結)
コート(拍手お礼7)
出掛けにコートを羽織ると、清一が襟を整えて、ボタンをとめてくれた。
「新しいコート?」
明るい色のコートが欲しくて、最近新調したものだ。
「会社まで30分もかかんないのにな」
確かに、そんな短い通勤にはウールの冬物のコートなど不要かもしれない。
呆れたように笑いながらも、大きな手は丁寧にボタンをとめる。
「ボタンの密度高くない?」
スタンドカラーの下、みぞおち辺りまで短い間隔でボタンが並んでいる。
「半分でも足りそうなもんだけどな」
清一が不満がる、そんなボタンがアクセントなのだ。
大きな手は、連なるボタンを上からなぞった。
「よくもこんな色のコートが似合うな」
わずかに紫がかったライトグレーは、綺麗な色だがなかなか売れないと店員が言っていた。
「事も無げに着こなしちゃって」
小さなため息は、嫉妬なのか心配なのか判然としない色気を含んでいた。
「外に出したくないな」
困ったような笑顔を見て、何故だか嬉しくなる。
ボタンを閉めてくれたお礼に、キスをした。
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