秋冬春夏(完結)
はじめて編3
純と清一は、ベッドを離すきっかけもなく、ただ流れのまま隣り合って眠っていた。
はじめは緊張していた清一も、一週間もすれば慣れて、普通に眠れるようになった。
キスは拒否されないことがわかったので、挨拶程度に、あんまり嫌らしくならないように、そして緊張を気取られないように、1日1回を目標に頑張っていた。
またトモからメールが来ていた。
その後は?
キスをして、同じ布団で寝て、そのあとだ。
一晩返事できずにいると、追い討ちがかかった。
アタシの知ってるショーイチは、雄の狼みたいな男だったと思うんだけど
うるせえ。
携帯の画面を見て、呟く。とにかく葛藤しているのだ。
純の寝顔を見るたび、迷路に入る。
純とどうなりたいのか。
一緒に居ようと言った先を全く考えていなかった自分が恨めしい。
そして純の行動力も恨めしい。
なんだってこうもとんとん拍子に同居しちゃうかな。
そして迷路は、どうして純が拒否しないのかという路に迷い込む。
社会人になってから、普通に女性と話せるんだよ、と複雑な表情で言っていたのを覚えている。
合コンだって一緒に行ったけれど、普通に話すどころか巧妙に盛り上げていた。
だからと言って女性恐怖症を克服したわけではないのだろうが、克服していないとも聞いてない。拒否しないのは女じゃないからだというのは単純すぎる。
ならば拒否しないほどどうでもいいのかと思うと、こんなに葛藤している自分が惨めだ。
あまりにも迷路の先が見えないので、したいと思う欲望に沿ってみることにした。
「純」
いつも通り、隣に横になった純に声をかけた。
「キスしてもいい?」
清一の困ったような表情を見て、純は少し体が熱くなるのを感じた。
ベッドの上ではじめてキスして以来、玄関先とか台所とか、挨拶のようなキスしかしてこなくなった。
正直残念だった。
先日の興奮が、体のどこかに引っ掛かっていたのだ。
だから素直に嬉しい。
「いいよ」
返事をするなり、口が塞がる。
清一は温かい。頬に添えられた手も、唇に触れた唇も。
「抱き締めてもいい?」
今まで抱き締められたことないのかな。
少しだけ考えてまた、いいよと返す。
清一は、純の冷えた体をぎゅっと抱き寄せた。
そのまま、何度か深呼吸をした。
少しして、
「……嫌じゃない?」
なんて聞くので、笑ってしまう。
「嫌じゃないよ」
嫌ならとっくに殴っている。
清一は安心したようにため息をついた。
「じゃあもう1回キスさせて」
「じゃあってなんだよ」
じゃあの意味はわからないが断る気などない。
いいよ。
先程より慎重に、清一は唇を重ねた。
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