秋冬春夏(完結)
はじめて編1
「ねぇショーイチ」
男なんだか女なんだか中途半端なやつが、甘ったれた声を出して寄り添ってくる。
カウンターに乗せた清一の手に、ぴと、と節くれだった手を重ねてくる。
手を見ると完全に男なんだよな。
そんなことを思いつつ、ぞわぞわ動く相手の指を見ていた。
「なんか冷たくなあい?」
フリーじゃなかったの?
と、手入れされたきれいな顔の、潤んだ唇を尖らせた。
「同居始めたって、さっき言ったろ」
「友達でしょ?」
相手は非常に不満げだ。
「まあ」
「セックスするの?」
セックスどころか、キスだって、不意打ちかました一度きりだ。
「しないけど」
当然ながら、ブーイングが返ってくる。
相手はひとしきりブーブー言ったあと、艶っぽく微笑んだ。
「なら」
アタシとしましょ。
断る理由もなくてしてみたものの、上の空なのは相手にもバレていて、だいぶ不興を買った。
冴えない気分で家に帰る。
恐ろしく姿の整った同居人は、清一を待たず眠りについていた。
まあ、仕方ない。
純は普通のサラリーマンだからな。
自分の布団を少し、純から離す。
彼の寝息を数えているうちに、清一も眠っていた。
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