長編@
〃
放課後。
カッ カッ カッ
すれ違う生徒たちに、奇異な目で見られながら薫は、勝手知ったる場所、生徒会室へと向かい歩いていた。
堂々と背筋を伸ばし歩く薫は、凛々しさが増し威厳がある。
『生徒会室』
生徒会室の扉の前に立つ薫。
「…………」
(……ここが、不幸の源の生徒会…か。……さて…ご対面といくか…………)
コン コン
「…入りたまえ」
ガチャ…
「失礼します……篠北 薫です…」
「「「!」」」
扉を開けると、会長・緒方正臣、副会長・新堂幹久、そして薫のクラスメイトである書記・瀬上真紘の三人が入り口を見た。
「お久しぶりですね。緒方会長、新堂副会長…入院前は随分お世話になって(ニャリ…)…お二方も息災で何よりです」
薫は不敵な笑みを浮かべ、嫌みな言葉を緒方、新堂に投げかけた。
「「………」」
挑発的な物言いに、緒方と新堂は驚きに目を見開く。
「……本来、ここにはいい思い出がないので、あまり来たくなかったんですが……ロッカーに私物を置きっぱなしだったのを思い出したんですよ……それに会計の件もハッキリさせたかったので来ました…」
薫は自分の私物ロッカーに行き、そのまま止まる。
「「「あ…」」」
三人は薫のロッカーを見て、固まってしまう。
「………へぇ。“死ね”ですか?…すみませんねぇ…死にそこないで…(ガチャ※ロッカーを開ける)」
薫のロッカーの扉には赤のマジックで“死ね”と書かれてあったのだ。
「…………………器物破損ですか?………よく人の物をここまでめちゃめちゃにできますね?」
薫は緒方たちに、ちゃめちゃになった『本』『時計』『カーディガン』などを見せた。
「「「………」」」
「………どれも使えないな……ハァ…勿体ないことをする…金持ちとはいえ物を大切にする心は忘れない方がいいですよ?」
「……篠北……お前は“あの”薫なのか?」
あまりにも、以前の薫とギャップが違うので、緒方が薫に確認をする。
「…そうです。……前の僕も薫ですし、今の俺も薫には違いありませんよ 緒方会長」
「………」
「はっきり言います。俺を生徒会に戻す話しは取り消してもらいます。…ま、あのロッカーを見たらやりたくはないでしょう?」
話しは終わりだと言わんばかりに、踵を返して生徒会室の扉に向かう薫。
「篠北、待ってくれ!!」
立ち去ろうとする薫を慌てて、緒方は引き止める。
「…………何ですか会長?」
後ろを振り返った時の薫の瞳は、恐ろしいほどの冷淡な目だった。
「(ビク)……は…話しを聞いてくれ…」
美しい貌から放たれた冷たい目に、さすがの緒方も瞬間怯む。
「………(…今更…何の話しがあるというんだ?)…ハァ………ま、本郷君が来る前の会長に免じて…一度だけは、話しを聞きましょうか…」
薫はため息をついて、瀬上の隣りのソファーに腰掛けた。
「………では、お話しを伺いましょう…」
薫は隣りにいる瀬上をはじめ、向かい側に座る緒方、新堂を一瞥しながら言った。
「「「…………(汗)」」」
薫から放たれる威圧感に、冷や汗が止まらない三人。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!