白銀の昇り龍 実はイイ奴 あらかた片づけが終わったところで、屋島が伸びをしながら言った。 「疲れましたねー。あ、浜中先生、教科違うのに手伝わせてしまってすみません」 ………そういえばそうだ。 「いやいやいいんだよ。俺は大城先生の手伝いする気満々だったし」 この人、言葉遣いはなってねぇし、俺のこと【お前】呼ばわりだし、すぐセクハラしようとすっけど、面倒見のいい、良い奴なんだろうな。 『ありがとうございます』 「お、素直じゃねぇか」 『……………………』 「そう嫌そうな目すんなって」 俺と浜中のやり取りを無視するかのように、和久井が話題転換をする。 「さて。では、もう18:00を過ぎましたし、寮に向かいますか」 俺たち教師のうち、半数は寮生活を強いられる。 それは不良校ならではの理由。 つまり、生徒が夜中に校舎に侵入して、何かあった時のための人員が必要なのである。 因みに、既婚者は学期ごとの交代制で、独身者は強制で寮に入らなければならない。 ただ、休みの間は完全に公平なシフト制になる。 また、寮にいる間は小型無線機の携帯が義務づけられ、なんかあった時はその発信ボタンを押せば、寮にいる全ての教師に異常事態の発生を知らせることができる。 なかなか考えられたシステムだ。 寮についたら、そのまま食堂に案内された。 食券を買ってそれを調理師に渡すという、いたってオーソドックスな形式である。 「A定食、ごはん大盛り。惣菜一式セット…………。大城先生、あなた、その細い身体のどこにそんなに入るんですか」 和久井が驚いている。 『さすがにいつもこの量ってわけじゃないですよ』 「ああ、今日は身体動かしたもんな」 『惣菜が半分ぐらいですかね、いつもは』 「………少なすぎますね」 『いやいや、A定食、ごはん大盛りに惣菜がこの半分です』 「お前ってとことん予想外……」 食堂の飯はうまかった。 食事は生活の要だ。 これなら、ここでの生活も悪くない………かもしれない。 ■□ [戻る] |