白銀の昇り龍 寝起きの攻防 うちのテツは本当にできた男だ。 昨晩、メガネをかけ忘れていたことに気付いた俺は、すぐにテツにメールを打った。 ちなみに、我が皇龍組は極めて規則正しい生活をしている。 それなのに、翌日の寮が開く時間にはカラコンを持ったテツが登場し、今は睡眠時間が短くて機嫌の悪い俺の面倒を甲斐甲斐しくみている。 機嫌悪くていまいち反応ができていないが、テツへの感謝の気持ちはあるわけなので。 今、俺はテツの抱き枕になっている。 あー……眠ぃ………。 「・・・・・・・・しょ」 「・・・だ・・・!!」 騒がしさで目が覚めた。 『んー……うるさ…』 「あ、おはようございます。紅さん」 『?』 【紅さん?】 なんでそんな呼び方をするのか問おうとした時、背中側から声が聞こえた。 「せんせー、なんでソイツと一緒に寝てんの?」 振り向くと、もの凄く不機嫌そうな宮浦がいた。その後ろに矢崎もいる。 昨晩も会ったのに朝からこいつらと顔突き合わすの、結構キツイわー。 そう思いながら時計を見ると……。 『じゅ…十時!?』 慌てて起き上った俺は、既に寝巻は着ていなかった。 「相当疲れが溜まっていたんでしょうね。 僕がここに来た時も、ほとんど寝てましたから」 『ええ、私も、坂上さんを部屋に入れてからの記憶が曖昧です。ご迷惑おかけしませんでしたか?』 「いえ。 ああ、お着替えを手伝った際の紅さんはかわいらしかったなぁ」 ……確かに、記憶はないが着替えが済んでいるところを見ると、寝ぼけた俺の着替えをテツがしたのだろう。 「はぁ?あんた、センセのハダカ見たわけ?」 「いけませんか?」 「いーわけないじゃん。センセは俺のなんだから」 「紅さんはあなたの物なんですか?」 「ゆくゆくはそうなる予定だし」 そうなんですか?とこちらを向いたテツは、不機嫌な顔をしている。 んなわきゃねーだろ、と言いたいところだが、俺は今、「大城先生」なので。 『宮浦くん。私は物じゃありませんよ』 「いいの。これから先、そうなってくの」 「そんなはずはありませんよ? 紅さんはこの間、僕に告白してきましたし」 どこからその設定きた!? テツの急な発言に焦った俺は、テツの顔をガン見してしまった。 「なんかセンセ、慌ててるけど」 疑わしそうな顔で宮浦が呟き、矢崎も頷いている。 「ああ、紅さん。恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか」 いや、俺はその設定が気に喰わないんだが。 「この間、校舎の裏庭で三人組に絡まれた時に仰ってくださったでしょう?」 ……ああ。あれか。 そういやそんな話もしたな。 『いえ、告白というか。あなたに憧れたといいますか』 「恥ずかしがらないでください、ね? ほら、君たちもここから出て。僕と紅さんの邪魔をしないでくださいね」 そう言いながら宮浦と矢崎を追い出したテツはやはりできる男だと思う。 ■□ [戻る] |