白銀の昇り龍
またもやコール
『というわけなんだが。高校生へのペナルティーって何やらせればいいんだ?』
困った時の相談相手はテツ。
テツは、「ちょっと待っててください」と何やら探してから、俺が欲しい情報をくれた。
「えーっとですね、校長から頂いた資料に、近隣住民からの苦情・要望というのがありまして」
『ほとんど苦情だろ、それ』
「ええまぁ」
『っていうかここ、近隣住民いるのか?』
だいぶ隔離された場所だと思うんだが。
「この付近を散歩コースにされている方とか、この隣までが自身の敷地だという方たちからの苦情・要望ですね」
『……ほとんどそれ、我儘だな』
「気に食わないからいちゃもんつけてやれというのが本音でしょうね。……聞きます?」
『………一応』
「えー、登下校中うるさい、マナーがなってない、下品、怖い、だらしがない、学生とは思えない。電車に乗らないでほしい、一般道を歩かないでほしい、せめて教員が通学路に立って指導してほしい、あと……」
『ちょっと待て』
「はい?」
『それ悪口じゃねーか』
「はい」
『はいじゃねーよ。もっとこう、なんかないか?』
「うーん……基本は罵詈雑言のオンパレードなんですよね。で、行きつく先は高校閉鎖しろってところなんですけど」
『よく校長もこの学校を続けられるな……』
本当に何モンだ、あのおっさん。
「あ、ありましたよ。若」
『なに』
「学校の外壁の落書きが下品すぎる、なんとかして欲しい、だそうです。
ペナルティーとして、外壁の落書きを消してはいかがでしょうか」
『良いなそれ。ところでテツ、落書きってどうやったら消えるんだ?』
「さぁ?……あ、ありました」
俺との会話とは別に紙をめくる音やキーボードを叩く音が聞こえてきている。
そして相変わらず仕事が早い。
「専用のものがあるそうですね。あとはシンナーとか」
『シンナーはマズいんじゃねーか?』
「若、最近の高校生はいくら不良でもシンナーはやりませんよ」
『そうか?』
「たぶん」
『……いや、なんだか危ないから却下で』
「ですね。それなら、明日の午前中にスプレー落としを買ってまいります」
『ああ、助かる』
「ついでに、私も参加しますね」
『なんで』
「今の若のままでは、いざという時に立ちまわれないでしょう。
用心棒ですよ。あ、私に惚れている演技ぐらいはしてくださいね♪」
『お前、楽しんでるだろ……』
「ええ、もちろんです!」
何やら上機嫌の世話係との通話を切って、俺は慣れない寮管室で睡眠を取ることにした。
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