白銀の昇り龍
-05
来た。奴らが、帰ってきた。
「センセー、1人であいつらの相手する気?」
『……仕事ですから。それに君たちとあの子たちは敵対関係でしょう?』
「うーん、騒ぎは大きくなるカモだけど、俺らがいた方が安全だと思うなぁ。
ね、たいしょーはどう思う?」
「俺は寝る」
「は? 帰んの?」
「いや、さっきの所で寝る。終わったら声かけろ」
そう言って矢崎は、寝る体勢に入る。
さすがの宮浦も驚いたらしい。本当に自由な奴だな……。
遠い目をしている間もなく、集団が帰寮した。
現在の時刻は0:15。
寮住まいの高校生が帰ってくる時刻では、ない。
がやがやと寮に入ってきた彼らは案の定、うちのクラスの問題児たちで。
俺の姿を見て眉間に皺を寄せ、宮浦を見て完全に臨戦態勢に入る。
この時間にここでバトってもらっちゃ困るんだが。
ここの生徒たちはいつもこうやってこいつらに迷惑かけられてんのかと思うと、知らず顔を顰めていた。
しばらくこちらの様子を伺っていた彼らは、結局無視することに決めたらしい。
俺たちの存在を視界から消したかのようにして、彼らの「日常」を送っている。
だが、そうさせないのが俺の仕事だ。
『相川、森、柴田、本村、塩瀬、加藤。3時間15分の遅刻です。よって明日、14:00から17:15まで私の指示に従って働いてもらいます』
「ちなみに俺は30分のペナルティーねー」
先ほどの6人とは違い、こいつらは性質が悪い。
無言にはなったが、まるで俺の声が聞こえなかったかのように返事もせずにいなくなった。
『どうすればいいんだか……』
まさかこの俺が、高校生相手に手こずる日がこようとは。
「悩殺しちまえばいいんじゃね?」
『はい?』
「センセが1、2枚脱げば、それだけで悩殺される奴いると思う」
『いや、何言ってるんですか』
「本気なんだけど」
『私は教師ですからね! だいたい君くらいですよ。そういう妙なこと言うの』
「みんなはセンセの魅力に気付いてないのかー」
宮浦のアホ発言にげんなりしながら背を向けた時だった。
「じゃあ、みんなが気付く前に、俺が喰っちゃおっかな♪」
『え?』
後ろから抱きつかれ、気付けばワイシャツのボタンをいくつか外されていた。凄い早業だ。
信じらんねーこいつ。
『矢崎くん、宮浦くんが変態です!』
「え、ちょ、センセ?!」
のっそりと起き上った矢崎の目の前には、宮浦に覆い被さられ、ワイシャツの前が開かれつつある俺。
さあ矢崎、これで状況が飲み込めただろうから、いつも通りこいつの首根っこひっつかんで帰るんだ!
と思って見ていたが、いつものような反応がない。
思わず『矢崎くん?』と呼びかけると、やっと反応があった。
「ああ、悪い。宮浦、帰るぞ」
「……はーい」
急にテンションの下がった宮浦を連れて、矢崎は帰っていった。
なんだあのコンビ。
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