白銀の昇り龍
-04
一斉にこっちを見た彼らを見て困惑する。
「罰」って言ったか? そんなもんあるのか?
フリーズ状態の俺と、そんな俺を見る7人。
「あるらしいぞ、罰」
『……あるんですか?』
いつの間にか起きたらしい矢崎が、眠そうな目で寮管ノウハウが書かれた俺のファイルをめくっている。
それ、生徒が見て良いもんじゃないような……。
「要約すると、遅れた時間分、翌日に寮管の指示に従って寮内の仕事をしろってことだな。ほれ」
矢崎が俺の鼻先に突きつけてきたファイルの文字を読むと、確かにそう書いてある。
ってことは。
『君たち2人は30分、君たち6人は2時間半、残りの6人はそれ以上の時間、明日、私と一緒にいるわけですね……』
え、手伝いとかいらねーから。
こいつらとずっと一緒にいるの心底嫌なんだけど。
そう思って思わず顔を顰めたが、それは奴らも同じようで。
「やらねーよな? そういううざいの」
「っていうか、呼び出されても俺ら、行かねーし?」
なんだか、こう言われると意地でも仕事をさせたくなるのが人の性である。
「え、俺はやるよ?」
「「「『え?』」」」
「だってセンセーと仕事とか、楽しそうじゃない」
俺は、お前が一番嫌なんだけどな、宮浦。
宮浦の発言に驚いた生徒が声を上げる。
「どうしちゃったんすか、宮浦さん」
「だってー、ルールだし? 俺、センセー気に入ってるし。べんきょーも見てもらったし!」
「勉強を見るのは教師の仕事っすよ!」
「社会科の先生なのに、英語見てくれたんだよ?」
「っ……ルールは破るためにあるんす!!」
『破るためにあるのは記録ですよ』
思わず入れたツッコミに対し、「わお!」と嬉しそうな顔の宮浦と噴出した矢崎。
2人の反応を見て諦めたらしい6人は顔を見合わせた後、「……何時にくればいいんすか」とぶすくれた顔で聞いてくる。
こうなったらやるということで、俺も腹を括るしかない。
『もう遅いから君たちも疲れているでしょう。明日は14:00からで良いですよ』
そう言うと、あからさまにホッとした顔をした彼らは、「なーんだ朝じゃないのか!」「それなら問題ナシ!」と好きなことを口走りながら各々の部屋に帰って行く。
終始反抗的な態度ではあったが、最後はなんとか話はできるぐらいにはなっただろうか。
『もう寝てる生徒もいるんですから、静かに!』
という俺の声が一応は届いたところを見ると、少しは言うことに耳を傾けるようにはなったらしい。
「大城センセってなんか規格外だよネ」
「まぁ、珍しいタイプなのは確かだな」
と上から目線で話す矢崎・宮浦だが。
『君たちもいい加減寝なさい!』
「えー……」
『えー……じゃないですよ。何時だと思って……』
その時、外がまた騒がしくなった。
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