白銀の昇り龍
-03
宮浦の英語を見始めてから1時間ほど経過した。
この学校で授業がここまで成立するのかと感心していると、「だって俺、英語は特進クラスだから」と宣う。
え、特進クラスの英語の面倒を社会科担当の俺に聞くわけ、なんなのコイツわけわかんねぇと内心で愚痴を溢していたのは最初だけ。
宮浦によると、英語を勉強する意思のある奴のみを集めたクラスが「特進クラス」というだけで、レベルとしては普通の偏差値の高校の英語と大差ないんじゃない?とのことだ。
で、実際に内容を見てみたら、普段英語を使わない俺でもなんとか指導できる内容で。
ただ、日常的に英語を使わなくなったせいで抜けてしまった単語やら文法やらを必死に思い出しながらである。
あれ、寮管の仕事ってこんなにハードだったか……?
そうこうしているうちに更に1時間ほどが経過し、外が騒がしくなった。
ちなみに、寮内はとっくに静かになっており、ここでの「普通の」生徒たちの多くは寝たものと思われる。
現れた生徒たちは、俺の知らない生徒たち。
寮のロビーに陣取った俺たちを見てぎょっとした顔をした彼らに、宮浦が一言。
「あんまりうるさくすると、うちのたいしょーが起きちゃうからね」
どうやら矢崎・宮浦に対しあまり強くは出られないらしい彼らは、顔色を悪くしながら「すいません……」と言って通りすぎようとした。
のを、俺が呼び止める。
『はい、一人ずつ学年クラス名前を言っていってください。まずは君から』
「先生」の地位がこの学校では高くないうえ、さらに俺の現在の容姿では、ボコりフラグが立ったようで。
「んだとてめぇ」「言うこと聞くとでも思ってんのか?ああ?」とメンチ切りながら言われる始末。
と、そこへ。
「3年A組岡村、渡辺、堀内、阿部、3年B組山田、長野、内山。ほら、こことここと……あとここにいる」
『あ、ありがとうございます』
宮浦が俺が持つ名簿を指さしながら彼らの名前を教えてくれた。
「ちょ、宮浦さん。何やってんすか」
「勘弁してくださいよ〜」
途端に弱弱しい声になった奴らが騒ぎ出す。
……俺への態度と宮浦への態度、逆なんじゃねぇか?
「うるさいよ。だいたい、大幅に門限に遅刻しておいて何言ってんのさ」
「は? 門限なんてあるんすか?」
「21:00だって」
得意気に言っているが宮浦、お前も遅刻だろうが。
「いやいや、冗談キツいっすよ。どこのガキですかそれ」
「まあ俺もそう思ったんだけどね。先生が門限あるって言うんだもん」
「え、まさか罰があったりとか……」
その瞬間、超良い子発言をしていた宮浦と、後から来た7人が一斉にこっちを見る。
え、何?
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