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白銀の昇り龍
こっちでも

結局、その後も手伝ってくれる生徒が増え、総勢11人で管理室のごみ処理をした。



生徒に触らせるべきではない灰皿やなんかは俺が担当する。
それ以外は、彼らに任せようと思っていた俺は、甘かった。



ごみの分別からして理解していない。
何をどうすれば部屋が片付くかということも、わかっていない。

手伝おうという気持ちはありがたかったが、なくてはならないスキルが、彼らには欠落していたのだ。


結局、彼らに一つずつ教えながら、2時間で、なんとか普通に過ごせる部屋にする。



ただ、予想外だったのは、やらなくて良いと言ったトイレと風呂(あれは惨状だった)掃除を、彼らが自ら申し出てくれたことだ。



いわく、「家でもやったことがないけど、逆にやってみたい」とのこと。



結局俺は現場監督に徹し、「できたー」「せんせぇー見て見て!」と騒ぐ彼らの仕事ぶりを褒めるばかりとなった。



あれ、ここって不良校じゃなかったっけ?



なんだかんだ言って、彼らはまだ子どもである。
子どもだからこそ、かまってほしいし、褒められれば嬉しい。あ、これは大人も一緒か。


ともかく、なんだか保父さんにでもなった気分で、今は寮の1階にあるコンビニもどきに買い出しに出た生徒を待っているところだ。

いわずもがな、お礼のアイスとジュースである。

買い物にいかなかった他の生徒には、冷たい麦茶を出して雑談。


『いやー、助かりました。私一人ではどうにもなりませんでしたから』

「いーってば。俺も楽しかったし」

「っていうか、俺らが声かけた時の紅ちゃん、超暗かったよね」

『それはまぁ、あの状態でしたからね』

「紅ちゃんって、ゴ○ブリとか駄目?」

『即行で叩きつぶします』



そう言うと、彼らは意外そうな顔をした。



「えー、スプレー持って遠くから攻撃するのが限界かと思った」



どこの乙女だ。



『ところで、皆さんは、どうして不良なんてやっているんですか?』



見たとこ、普通に暮らしていてもおかしくない生活態度に性格である。
なんでだ?



「え、これが高校生の普通″だし」



……どうしようもない答えが返ってきた。



何とも言えない気分になったところで、買い出しに出ていた生徒たちが戻ってきて、夕飯前のティータイムとなった。
(アイスを食べようとしたヤツがいたので、「アイスは食後!」と叱ったら、なぜか喜ばれた)


彼らの話を聞いていると、いかに彼らの世界が狭いかが分かる。

特に寮に住んでいる生徒は、この学校の中しか知らない。
世間一般の常識がほとんど通じないこの学校の「普通」が、そのまま彼らにとっての「普通」なのだ。



『修学旅行とか、体験実習とかは行かないんですか?』

「え、それが成立する学校だと思う?」

『……なかなか厳しいかもしれないですね。
でも、中学校の時にはあったんじゃないですか?』

「この学校の生徒が、中学時代にそういうのに積極的に参加したと思う?」



もう何も言うまい。


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