[携帯モード] [URL送信]

白銀の昇り龍
罰則

保健室のドアが開き、ピンクの長髪の男子生徒が入室した。

彼は室内を見回すこともなく、一直線にベッドに転がる体育教師の元へ向かう。

男子生徒に気づいた体育教師、もとい浜中は、ゆっくりと上体を起こして眉を顰めた。


「……なんだ?」

「保健室で淫行に及んでいる人がいて迷惑だという報告があったから、見にきたんだよね」


にっこりと笑いながらそう言ったその生徒は、おもむろに浜中に近づき、その手をとって臭いを嗅いだ。


「教師同士でも、生徒と同じ罰則だって知ってる?」

「……知らないな」

「ふふ、でもどうやら未遂みたいだね。
だから、謹慎期間は2日でいいよ」


それを聞いた浜中は、盛大に眉間に皺を寄せた。


「……普段仕事しない奴が何言ってんだか」

「毛色の違う猫が可愛くてね。ついうっかり、いつもはしない仕事がしたくなっちゃった」

「ついうっかりで謹慎処分される俺の身にもなれよ」

「あはは」


思わず深いため息をついた浜中だが、そこであることに気づく。


「っていうか知ってたんだな」

「いや?初めましてはさっきだよ」

「じゃあなんで…?」

「報告してきた奴が、いつもは報告される側だったからね。これはなんかあると思って」

「お前……物見遊山かよ」

「まぁそんなところ」


再度深いため息をついた浜中は、ふと思案するような顔をした。


「なぁ、お前にチクったのって……」

「生徒のプライバシーを守るために、報告者の名前は出しちゃいけないことになっているんだよね」

「……こんな時だけそういうこと言うのかよ」

「なんなら、謹慎期間を延長するけど?」


そこまで言われてしまっては、臑に傷のある浜中は何も言えない。


「あーはいはい、わかりましたよ」

「わかってくれて嬉しいよ」


相変わらず似非笑いをしながら言う男子生徒に今度こそ脱力した浜中は、手で男子生徒を追い払う仕草をすると、再びベッドに寝っ転がった。


「ちょっと」

「あ?」

「何してんの」

「は?」

「今すぐに謹慎してよ。ホラ、さっさと寮に戻って」


そう言ながら、内ポケットから携帯を取り出す。


「俺がこれから高輪サンに連絡入れるから。ちゃんと見張ってもらわないとね」

「マジかよ……」


がっくりと肩を落とした浜中だった。


[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!