白銀の昇り龍
第二校舎三階
数日後、授業の入っていない時間に俺は職員室にいた。
大抵の教室陣は授業に出払っていて、今は俺と西島と生物科の教師しかいない。
しかも、生物科の教師は寝ている。
なんとも静かな午後だった。
だが、そこへ。
ガラッ
「大城先生」
音楽科の………なんとかって教師(←名前覚えてない)が、少し慌てた感じで入ってきた。
『なんでしょうか?』
「今すぐ第二校舎の三階に、私といらしてください」
『………はい?』
なんでよ?
「体育祭で音楽科の隣の空き教室を使う予定なのですが、そこに社会科のものらしい教材がたくさんあるんです。本当は他の社会科の先生方にも手伝っていただきたいところなんですが、見たところ先生しかいらっしゃらないようですので。
なるべく早く済ませたいので、申し訳ありませんが、まず社会科のものかどうかの確認だけでもよろしくお願いします」
おおう。もし社会科の教材だったら大迷惑をかけてることになるんだよな。
『すぐに行きます!』
そう言うと、相手はほっとしたような顔になった。
「ありがとうございます。では、私についてきてください」
そう言って、足早に歩き出したその教師。
年の頃は40代前半。
髪が後退しているわけでも、中年太りなわけでもなく、少々気弱そうだ。
……お?
どうも寮内で見ない顔だと思ったら既婚者か。
サイズぴったりの指輪が初々しいぜ。
無言な空気と妙に足早な空気が気に食わず、これ幸いと早速それをネタに引っ張り出した。
『先生はご結婚なさってどれくらいなんですか?』
ビクッ
ん? なんだ? 聞いちゃいけない話だったとか?
「じゅ、12年です」
あらら。新婚さんじゃないのか。
ってぇことは。
『じゃあ結婚してからこっち、体型維持してんですね』
すごいなぁ偉いなぁだなんて言えば。
「い、いえ、この学校仕事が多いもので」
ああ、太る暇もないと。
「ってなんで僕の体型が結婚当初から変わってないってわかったんですか!?」
『指輪がサイズぴったりだもんですから』
そう返すと、彼は自身の手を見て、しばらく何やら考えだした。
そして、そんな彼に興味のない俺は。
『しかし結婚してから12年かぁ。じゃあお子さんもいらっしゃるんですか?』
「は、はい………小学校の4年生で」
『男の子? 女の子?』
「男です」
男の子かぁ。
しっかし、なんでさっきからこの人浮かない顔してんだろう?
………何か臭うな。
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