白銀の昇り龍
数日後
『今までに説明したところで分からないところがある人は、質問してください』
俺の担当は日本史だ。
今は3A、つまり西島のクラスで授業中。
意外や意外、数人以外は出席してるという奇跡。
まぁ、このクラスは初授業だしな。
先生のお顔拝見ってトコか。
因みに授業内容は、日本史で一番最初に躓きやすい平安時代の摂関政治について。
日本史でもなんでも、最初に多少難しいところをやっちゃった方が気持ち的に後が楽なんだよな。
一通り説明を終えて一息つき、そんなことを考えながら、質問があるかどうかクラスを見回したところ……。
「せんせー」
『はい、何でしょう』
「ヘイアン時代のセッカン政治についてはなんとなくわかったけどさ」
な ん と な く ……だと?
この俺が教えたのに【なんとなく】?
そこは【たいへん良くわかりました】だろうがっ!!
「ヘイアン時代の将軍は何してたの?」
あれ、なんかすごく嫌な予感。
『将軍っていうのは征夷大将軍のことですか?』
「セイイ…? 違うちがう。フツーの将軍」
『普通のって………たとえば?』
「んーとね、あ! 暴れん坊将軍とか!」
『……………………』
「………?」
『……………………』
「せんせ……?」
な、なぜ誰も何も言わないんだ!
ここはノリの良いクラスメイトの何人かが「バッカお前何言ってんだよー」とかツっこむところだろ?
ま、まさか………。
『えー、【暴れん坊将軍】の名前を言える人、いますか?』
「は? あいつに名前とかあんの?」
徳川吉宗はお前の知り合いか!という言葉をぐっと堪えて、クラス中を見まわすと、質問してきたのと別の奴が眉間に皺を寄せて一生懸命な顔をした。
「あいつだ……えーと………徳川ナントカ!!」
『……………徳川吉宗』
「そうそうソレ! 江戸時代?だよな?」
『………ええ』
「へー、お前凄いな!」
む………無知すぎる!!
こんなどうしようもない問答をしていてもしょうがないので、彼らの知識を整理させるための説明をして、授業は終了。
あー………疲れた。
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