隷属 -I'm Your SLAVE-
Y
翌朝。
俺はいつものように葉月を迎えにいったが、葉月は出た後だった。
学校でも、隣が席にも関わらず葉月は俺を無視し続ける。
昼休み、俺はそんな葉月を呼び出した。
しぶしぶ、そういった感じで付いてくる葉月を連れて屋上に行く。
『葉月』
「……なに」
感情の籠もらない声。
『昨日はごめんな』
「…謝って済む問題じゃない」
『じゃあ、俺はどうすればいい?』
「僕から離れて。僕と関わらないで…」
『どうしても、だめ?』
「嫌、なんだ……」
『……そうか、それは残念だな』
「?」
フゥ、と息を吐き出した俺は、おもむろにケータイを取り出した。
それを見た瞬間、葉月の顔が強ばる。
『葉月。これなーんだ?』
そう言って画面を見せた。
そこには、昨日葉月が消したものと同じ画像群が表示されている。
「な…んで?」
『写メった直後にPCにも画像を送ったんだ』
だから、いくら消しても無駄。
葉月は諦めたような顔をした後、口を開いた。
「何が望み?」
話が早い子は助かるよ。
『望みはいくつかあるけど……まずは、3年の先輩と別れて』
「っ! なんで!?」
『言うこと訊けないの?』
「………わかった」
その日の放課後、葉月は2日前に付き合ったばかりの先輩を呼び出した。
俺はその様子を物陰から見ていた。
葉月はなんと言って別れるのだろうかと不思議だったのだ。
理由は意外なものだった。
「先輩とキスして嬉しかったけど、それと同時にその先の行為が怖くなったんです。ごめんなさい」
ただ、それだけ。
だけど3年生のソイツは納得しなかったらしく、去ろうとする葉月の腕を取ってキスしようとした。
だから俺は物陰から出ていった。
『葉月が嫌がってんだろ。離せよ』
我ながら白々しい。
3年の先輩は俺が登場したことで、葉月から手を離した。
「お前、昨日の…?」
『はい。葉月の幼なじみです』
先輩はしばらく俺たちを見比べた後、
「ふぅん、そういうことか………せっかく【あの】葉月を抱けると思ったんだけどな」
そう言った。
「どういう…意味?」
「なに葉月、お前自覚ないのか? 結構いろんな奴の間で誰が葉月のバックバージンを奪えるか、競ってんだぞ」
「じゃあ……」
「俺は、確かにお前を気に入ってるよ。だけど、抱けないなら意味ないよな。そっちの…幼なじみだっけ? 葉月はセックスそのものが怖いらしいからなかなか難しいんじゃないか?」
そう言われた次の瞬間には、その先輩は吹っ飛んでいた。いや、俺が殴り飛ばしたんだ。
『行くぞ葉月。こんな奴に用はない』
呆然としたような葉月の手を引いて、俺は再び屋上に行った。
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