隷属 -I'm Your SLAVE- Z 屋上に着いた俺たちは、しばし無言だった。 不意に、葉月が泣き出す。 「ひっく……うぅ」 俺は、葉月に手を差し出してもいいのだろうか。 …………いや、駄目だろう。 俺にできることは…… 『…葉月』 「えっぅ…」 『葉月』 「う…な、に?」 『俺のモノになれ』 そうすれば、泣いてるお前を抱きしめられる。 「七海は…」 『なんだ?』 「あのこと…知ってたの?」 『あぁ』 風の噂程度だけどな。 「だから、僕を抱いたの?」 『………違う』 「じゃあなんで……」 今、この気持ちを伝えるわけにはいかない。 伝えたところで、葉月の気持ちは手に入らない。 それならいっそ……。 『葉月。俺は何を持っていたっけ?』 「え?」 『他人に見られちゃマズいもの、あったろ?』 「!」 目を見開く葉月。 だけど、俺は気づかないフリして続ける。 『返事は?』 「…………はい」 こうして、葉月は文字通り俺の【モノ】となった。 これが、1年半弱前のこと。 今、俺たちは高校2年生の秋を迎えている。 あの直後、俺は毎日葉月にキスマークをつけ、校内を歩く時は葉月の腰を抱いて、また隙あらば葉月にキスをして周囲を威嚇した。 そして、葉月はほぼ毎日、俺に抱かれている。 俺の両親は共働きで家にいることがほとんどないため、シたい放題だった。 俺たちはあらかたのことはしたと思う。 様々な体位でのセックスはもちろん、シックスナインもしたし、玩具に放置、鏡に緊縛、露出といったプレーもした。 コスプレをしてやったこともある。今じゃ葉月はなんの躊躇いもなく俺にフェラするようにまでなった。 俺はと言うと、葉月を恒常的に抱くようになってからは他の誰ともシていない。 それでも未だにかつてのセフレに言い寄られることがあるが、俺は葉月以外の奴に興味はないんだ。 そんな俺たちを見て、周囲の反応も変わりだした。 まず、葉月を狙う奴がいなくなった。 最初のうちは俺が見ていないところで葉月にちょっかいを出す輩がいたのだが、俺はそういう奴を見つける度にたとえ相手が上級生だろうがなんだろうがシめた。 それでも俺たちの関係は【恋人】というような甘いものではない。 あくまで葉月は俺に【隷属】しているのだ。 俺がキスをしようとすれば口を開け、セックスをしようとすれば自ら服を脱いで足を開く。 ……………恥じらいはかなりあるようだが。 とにかく、俺たちは恋人でもなければ幼なじみでもなく、友達ですらなくなってしまった。 だからだろうか。 最近、どんなに葉月と身体を繋げても、俺は心が満たされなくなってしまった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |