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アンタとオレの関係
フランスでの日々

空港での父さん・母さん・兄ちゃんとの濃厚な再会の後、車でを走らせて、俺たちはパリ市内にある家に向かった。

初めて見るパリは、趣のある建物や広場、散歩コースに良さそうな小径があり、俺は、窓にへばりついて魅入っていた。

家に着くなり、兄ちゃんに肩車され、天井に頭をぶつけた。

それを見ていた悠にぃが兄ちゃんを叱り、さらにそれを父さんと母さんが窘めていた。


なんだかんだでいつも通り。
ここが日本ではないということを除けば、これこそが4ヵ月かそこら前までの、佐倉家の日常だ。

父さんたちは、俺や悠にぃの新しい暮らしぶりについて聞きたがった。

悠にぃは大学での勉強やら一人暮らしでのことを、俺は学園での話をした。

悠にぃの話の時は、専門的で内容が難しかったせいか、みんな相槌を打つばかりで、悠にぃの一人語りになってしまった。

……なんとなく、悠にぃとの壁ってこういう時に感じるんじゃないかと思う。

悠にぃは、昔から頭が良すぎるんだ。
だから、周りの人たちと歩調が合わず、気づいたら悠にぃは一人で先に行ってしまう。

そんな悠にぃを見ていたら、なんとなく、化学オタクの気のある蒼太を思い出した。

蒼太の場合は同じく頭の良い和巴ちゃんがいるから、周りと歩調が合わないなんてことはない。

だけど、たまに和巴ちゃんが手助けするかのようにして会話していることがある気がする。

俺は頭良くないけど、和巴ちゃんを見習うことはできるかも知れない。

和巴ちゃんが蒼太の説明不足を補うのなら、俺が悠にぃに対してできることは………


『悠にぃ、それってどんなやつ?教えて!』


わからないことを「わからない」ってきちんと悠にぃに伝えること。
母さんたちは少し驚いた顔をしたあと、笑いながら「わからないから教えて」っておんなじこと言ってた。

そっから、フランスにいる間は、悠にぃとの会話もかなり増えて、俺が一方的にもっていた苦手意識はだいぶなくなった。





だけど。





ある晩、前よりもたくさん、いろんな話をするようになった悠にぃは、少し迷ったような顔をしながら、俺に学園でのことを聞いてきたんだ。



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