アンタとオレの関係 -02 その声は、とても力強かった。 声量自体はそれほどでもなかったのに、その場にいる人間が思わず振り向いてしまうような、確かな存在感を持った声。 魅惑的というのとも違い、傲慢さを感じるわけでもない。 魅力的かと言われると、そんな言葉では足りない。 おそらく、多くの人間が、思わず付き従いたくなるような、絶対的な存在感が、その声にはあった。 そんな声の主を探そうと、振り返ってみれば。 どこかで見たような面差しと、華奢ながら上背のある体躯。 そして、僕の隣にいた彼の「にい・・・・・」という呟きから、彼の兄であることがわかる。 一言で言えば、違和感。 今自分の隣にいる彼は、どちらかというと人懐こさが表情に表れている。 その一方で、向かいにいる彼は、なんとなく冷たい感じの眼差しだ。 なんとなく、転入当初の彼の弟を思い起こさせるような、そんな表情。 しかし、大きく違う点がある。 転入当初の横の彼は、似たような冷たい眼差しでもその中にこちらの庇護欲を刺激する何かがあった。 向かいにいる彼には、そんなものは一切ない。 どこか、周囲を突き放すような雰囲気を持っていて。 独りでも、堂々と立っていられる。そんな感じ。 あの人が、遼のお兄さん。 遼から聞いてはいたけれど・・・。あの感じでは、確かに遼とは馬が合わないだろう。 隣にいる遼はといえば、緊張しながらも、迎えに来てくれたことを喜んでいることがよく分かる。 『遼の、お兄さん?』 小声で聞けば。 「うん。すぐ上の兄貴。悠樹っての」 遼は囁き返してくれた。 その後、遼のお兄さんとお互いに自己紹介。 その間も、遼のお兄さんはあまり表情が変わらなくて。 遼と似た顔なだけに、僕たちは面食らってしまった。 「夏休み中に会おうね!!」 でも、最後の遼の笑顔と約束に、僕を含めた周囲の人間は、いくらか固くなっていた雰囲気を和らげた。 「遼のやつ、お兄さんが迎えにきて良かったな」 「遼一人だと、迷子になってないか心配になる・・・・・・」 「ふふ、なんだかんだ言って、遼くん嬉しそうだったね」 『そうだね。さて、僕たちの迎えも来てるみたいだし、行きますか』 こうして、僕たちの波乱づくしの一学期は幕を下ろしたのだった。 ◆◇ [戻る] |