アンタとオレの関係 帰省-01 終業式の後の寮の前庭は、帰省する生徒と迎えの車でごった返していた。 って、迎えの車って・・・・・・。 むろんそんな豪勢なものがない俺は、正門までの長い長い道のりを思って、遠い目をしていた。 そんな俺の隣では。 「あ、母さんが迎えに来た」 「うちの執事がやっと来たぜ」 「じゃあね、みんな」 と口々に別れの言葉を述べ、車に乗り込む生徒たち。 ちょっと羨ましくなっていると、頭を鷲掴みにされた。 『いったいよ健ちゃん!』 「お前、迎えとかないんだったら、最寄駅までうちの車に乗ってくか?」 『え、いいの?』 「おう」 おもいっきり気分が浮上したところで、今度は後ろから抱きつかれた。 『ぐぇ・・・・・・ゆーし』 「行っちゃ、ダメ」 有志は、教育実習生である怜志を待ち、一緒に帰るため、あと二日間、ここに留まるらしい。 昨日から俺にべったりくっついて、兄である怜志をも呆れさせていた。 『お前ね、昨日さんざん俺とくっついていたでしょ。だいたい、夏休み中に会えるんだから、少しは我慢しろよな』 俺の言葉を聞いて「う〜〜」とか可愛く唸っちゃっているけれど、躾はきちんとしないとね。 「俺は、遼と会う約束がないんだが?」 「あ、俺も俺も〜」 「・・・・・・出たな、生徒会メンツ」 「天敵・・・・・・」 健ちゃんと有志が険悪な雰囲気をかもし出したのもものともせず、夾とピンク頭、裕行会長がこちらに近寄ってきた。 『ってあれ? 他の人は?』 「あとのヤツらは実家の仕事で先に帰っていたり、生徒会の仕事が残っていてな。ここには来れない」 ふぅーん? 「ところで遼」 『はい?』 「夏休み明けは覚悟しとけよ」 俺の耳元でそう囁いた夾はどこかいたずらっ子のようで。 でも、何故か目が離せない。 そんな俺たちの横では、ピンク頭が相も変らず和巴ちゃんにちょっかいを出してカウンターを食らっていた。 周りは騒がしいはずなのに、何故か目に入ってくるのは夾だけで。 でも、その状態も、背後から加わった重しのせいで、一気になくなった。 『ゆーし・・・・・・おも、い・・・・・・』 ぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・ 「ってお前はドサマギに何やってんだ!」 「イタァ・・・!」 『って健ちゃん! 俺にも被害が出てる!』 「お前はついでだ」 『ヒドッ!?』 健ちゃんのゲンコツが有志の頭に決まり、さらにその二次被害を受けた俺が上げた声で、その場が騒がしくなる。 おかげで、夏休み前のちょっと寂しい気分も一気に吹き飛んで行った。 そんな中。 「遼」 静かだけれど、よく通る声が、俺の名前を呼んだ。 ◆◇ [戻る] |