アンタとオレの関係 キナ臭い 仕事をしっぱなしで固まってしまった筋肉を解そうと、席を立ち、窓を開ける。 すぐに入ってくる爽やかな空気。 この学園には緑が多いから、よっぽど暑かったり寒かったりしない限り、俺は窓を開けるのが好きだ。 だがここ最近は、風が爽やかな空気を運んできても、気分は優れない。 原因はよくわかっている。 俺の想い人は未だに告白の返事をくれず、さらにその想い人に言い寄る男がいるという今の現状が原因だ。 だが、救いもある。 それは、体育祭までの間は基本的に縦割りのクラスで過ごすから、遼と一緒にいる時間が多いこと。 学年が違えば、基本的に生活する階も違い、そうなると意識的に動かない限りなかなか会えない。 それが、休み時間の度に縦割りのクラスで集まる体育祭準備期間ならば、一日に何度も会えるのだ。 まぁ、邪魔者もいるが。 それと、これが一番嬉しいことなのだが、俺がさりげなく求愛行動をすると、遼が顔を赤くするのだ。 今まではそんなことをしてもなんの反応も得られなかったのだが、交流会のときに想いを伝えたのが効を成したようだ。 そういうときの遼は、犯罪級に可愛い。 顔を赤くして恥ずかしがる遼(←あくまで夾の色メガネ)を思い出して悦に入っていると、爽やかな空気を運んできていた風が、余計なものまで運んできた。 遼を呼ぶ、梅原恵の、声。 ………なんなんだ、あの甘ったるい声は。 俺の大好きな澄んだ声の主はどうやら見つかっていないらしい。 そのまま、逃げろ。 そんな奴に捕まるんじゃない。 そんなことを考えながら外の声を聞いていると、梅原恵は遠くに行ったようだ。 『梅原恵、か………』 「遼くんも厄介なのに目をつけられたよね」 生徒会長用の椅子に腰掛け、伸びをしながらダルそうな声を出す、俺の従兄弟。 今、ここ生徒会室には俺とコイツの二人しかいない。 こういうとき、コイツは本音を言う。 「なーんか怪しいんだよね、新聞部といい、梅原恵といい」 『タイミングが良すぎるのは確かだな』 「首謀者のアテはある?」 『…………どっかの親衛隊の幹部だろ』 「どこか、が問題だよねー」 『新聞部からは何も出てこなかったしな』 「あいつらは単に使われただけでしょう?」 『……梅原恵、か』 「さっきもそう言ってたねー。夾くんさ、どうするつもり?」 『もう少し、様子を見る』 相手の目的がわからない今、動くことはできない。 「大事にならなきゃいいけど…」 裕行のその言葉が、やけに耳に残った。 ◆◇ [戻る] |