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アンタとオレの関係
-02

後回しにすればするほど聞きづらくなるのは目に見えているので、一刻も早く、名前と用件を聞こうと身を離そうとしたその時だった。


ピリッ

『いっ……?!』


この感覚は、知っている。

でも、まさか。

初対面の相手にされることだろうか?


相手は俺の首から顔を離し、満足そうにそこを見ている。

この明かりの少ない中庭でも、その表情はよく見えた。


「遼くんに、僕の跡、つけちゃった」

『……………』


いやいやいやいや!
なんか駄目だろ、この状況!

ってか何してくれちゃってるんだ。


『なんで………』

「僕ね、遼くんのこと、大好きなの。だから」


こんなこと言ったら傷つけちゃうのはわかっているけれど。


『好きだからって、相手の気持ちを確かめもせずにこういうことをするのはどうかと思いますけど……』

「そう? 僕の気持ちを知ってもらうためには、かなり有効な手段だと思ったんだけどな」

『跡、残っちゃうじゃないですか』

しかもこんな見えやすいところに。
どうしてくれるんだか。


「だって、わざわざ残したんだもん」


確か、夾はこれを「俺のものだという印」だと言っていた。

そんなものを見ず知らずの人間に付けられてはたまったものじゃない。


『あなたは……俺を知っているかもしれないですけど、俺は、あなたを知らない』


そう言えば、相手は驚いたように俺を見てきた。


「僕を……知らない?」


本気で驚いているその目をしっかりと見て、はっきり告げた。

『ええ、知りません』


それを聞いた相手は俺から離れ、「ごめん」と一言呟くように言うと、向きを変えて走り去ってしまった。



…………なんだったんだ。いったい。



その後部屋に帰った俺の首筋の跡を、有志が上から付け直したのは言うまでもない。



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あきゅろす。
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