アンタとオレの関係
-05 (SIDE KYO)
肝試し。俺はなんともないが、遼はだいぶ苦手らしい。
必死に俺の腕にしがみついている。
やべ、顔がニヤけるんですけど。
烏が鳴けばびくつき、人の叫び声が聞こえれば不安そうに辺りを見渡す。
そんな遼がかわいくてたまらない。
この肝試しの企画者は誰だったか……確か、春一と譲のマニアペアだったか。
春一はバカだが、数少ないある方面にかけては天才だ。
一方の譲は趣味がメカいじり。
あの2人が力を合わせた今回の肝試しは楽しめそうだ。
現に、あの2人はコースを20も用意したと言っていた。
最初はただの時間短縮だと思ったが、今歩いていて、その狙いがよくわかる。
コースは20。そして5分おきに出発するというルール。
おそらく、行きと帰りのルートは変えてあるのだろう。
さらに、目的地まで行って帰ってくるまでの時間が30分。
単純に計算すると、最高時には240人もの人間が同時に肝試しをしていることになる。
さて、その240人が恐怖の悲鳴をあげたらどうなるか。
森は木が音を遮ることもあるが、今は夜。鳥の多くも寝静まって特に静かな時間だ。
さらに30分のコースということは、恐怖で足がなかなか進まないだろうことと目的地での時間を考慮しているはずだが、それでも片道600〜800m近く歩かされるわけだ。
また、この付近は傾斜がキツいところがある。
以上の条件を考えれば、答えは簡単に出てくる。
近くから、遠くから、前後左右から、時には上から下から………恐怖にかられた人の叫び声が聞こえるのだ。
人の声が聞こえるということは自分たちがコースアウトをしていないと確認できるから、俺にとっては良いことなのだが、遼の様子を見ていると彼にとっては恐怖を増す一要因にしかなっていないようだ。
よって、必死に俺を離すまいとしがみついてくる。
…………今のこの状況を作り出した春一と譲に感謝だな。
◆◇
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