「ん?」
かわいらしい雑貨品が並んだコーナーで、私は足を止めた。
「蔵馬?」
いつしか見失った連れの名前をつぶやく。
店内をキョロキョロしながら歩いてたら、蔵馬とはぐれてしまったみたいだ。
「……ま、そのうち会えるでしょ」
ポケットには携帯もあるし、同じ店舗内にいるわけだし。
さすが楽天的。私は鼻歌混じりに雑貨品を物色しだした。
「やっと見つけた」
すると突然、手首を掴まれた感触があって、振り返る。
「──蔵馬」
「…………」
無言で私を引き寄せる力は少し強引で、彼の不安みたいなものが伝わってきた。
じっと見上げる私の視線の先で、蔵馬はため息をつく。
「あれほど迷子にならないでって言ったのに……」
「ごめんなさい。すぐに会えると思ってた」
私は笑顔で答えるけれど、蔵馬は真剣な顔を崩さない。私の手も離さない。
行きますよ、と言って歩き出す。
「何だか蔵馬が迷子みたいな顔してたよ」
「………」
沈黙する蔵馬の背中。無邪気に向けた言葉だったけれど、私は焦りだす。
あれれ、まずかったかな?
だけど付き合いだしてから、蔵馬のいろんな表情を見れるようになった気がする。
そんな顔するんだ、なんて思っては、いつもドキドキしてる。
だから今のも悪い意味じゃなかったんけどな。……怒ったのかな。
いろいろ考えてたら蔵馬が急に足を止めたので、思わずぶつかりそうになる。
「…俺なんだ」
「え?」
「君がいないと不安なのは」
何も言えないでいる私に、蔵馬は前を見たまま早口で告げる。
「俺の目の届く範囲にいてくれ」
そうして、肩越しにチラッとだけ私を振り向いたその頬が、ほんのりと赤に染まっていて。
かわいい、なんて思って、愛しくなりました。
……なんて言ったら、蔵馬は今度はどんな顔するかな?
幸せで、私はこっそり、笑った。
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