FREE
束縛されるのが、嫌いだ。だって好きなことして、自由に生きて、本能に従うのって悪いことじゃないでしょ。アナタ一人なんかじゃ私は満足できないのよね。私はもっともっと多くの人に愛されるべき存在だと思うの。だから、ね、わかるでしょ。
「他の男と会うのやめない?」
「嫌よ」
「はあ…そっかよ」
「それが嫌なら」
「別れねェよ」
「あらそう」
付き合ってと言われ、余程の不細工じゃなければイエス一択だ。私も雌なのだから良い遺伝子と結ばれ子孫を残したい。そのため選りすぐりの遺伝子を探すのは当たり前のことだろう。たった一人なんかじゃ満足なんてできない。そんじょそこらの女と一緒にしないで頂戴。
溜め息を吐く銀さんは格好良い。いや、何をしても格好良いと言える。銀さんの顔は私の中ではストライクに近い。でも、顔が全てな訳じゃないわ。顔、性格、人付き合い、体の相性。この四つは合格してもらわなければ。お金はなくても良いものなのよ。私がどうとでもできるから。だから銀さんの不合格なところは、
「性格よね…」
「今更変えろなんて無理な話ですー」
「もっと大きな器にならないかしらね」
「…なまえが男んとこ行くの、笑って見送れってか」
「見送らなくて良いわ。受け入れて頂戴」
あの堅物な性格のお陰でセックスだってまだなのだ。今までの男たちは喜んでぶち込んできたと言うのに、銀さんだけは頑なに断られる。なまえが他の奴と切れたらな。そう言って笑って抱き締めて一緒に眠る。もう棄ててしまおうか。何度も考えたのだが、まだ傍にいる。あの性格を逆に考えると、銀さんほど堅実な人はいないのではないだろうかと思う。だから離れられない。けれど、体の相性というものは重要でしょう。だから他の男を切ってまで銀さんとセックスする必要があるのかを見極めている。銀さんの周りには面白い人が沢山居る。だから銀さんを切るとその人達との繋がりも絶たれてしまうだろうと思う。
「じゃあ、行ってくるわ」
「はいはい」
「ちゅーはしないの?」
「はいはい」
「随分なお返事なのね」
触れるだけのキス。こんなにキレイな関係なのは銀さんだけである。にっこり笑ってしばしの別れを告げているのに、銀さんは応えてはくれない。まあ、それもそうでしょう。軽く手を降って戸を閉めた。私を見送るのは一体どんな気分なのだろうか。私もされれば分かるのだろう。だが、もしもそんなことがあったのならば、私は銀さんを迷うことなく棄てるだろう。良質の雄の遺伝子が他の雌に奪われるなんてあってはならない。選ぶ権利は雌にあるのだ。それは動物界だって同じでしょう。
(でも、なんだか、ね)
体の関係を持つ男は溢れる程いる。でも私は必ず銀さんの待つ家にその日のうちに帰る。これは私なりの“彼氏”だけの権利だ。一度に何人と付き合おうが“彼氏”と呼ぶのはただ一人なのである。
色んな人と一緒に過ごしたいのだが、最近私はおかしいようだ。どうしてそうなったのかは分からないが、銀さんの隣でないと熟睡できない。銀さんの匂い、銀さんの体温、銀さんの声、銀さんの腕の中。銀さんに包まれていないと眠りが浅いのである。銀さんじゃなきゃ駄目な気がしてきたのは、きっと、気のせいよ。ね。
A
FREE
WOMAN
今日の男は何番目?
111104
一壱子
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