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ソファーに寝そべる。頭は銀ちゃんの太腿の上。がっちりしていて寝づらいけど、くっついていると安心できる。銀ちゃんはというと半目でテレビをじーっと見ていた。かれこれ一時間程この状態が続いている。時たま私の頭をごつくて優しい手が撫でる。確かに気持ちいい。でも、折角二人きりなのにこんなごろごろしてて、なんだか勿体無い気がするのである。だからといって何かしたいことでもあるわけではない。

「銀ちゃーん」

「なにー?」

「あそぼ」

「何して?」

「えーっと」

言葉が続かなかった。何も出てこない。唸っている間に銀ちゃんはまたテレビに目を戻した。ああ、もう。頭を撫でられる。することないし、遊びたいことも思いつかないから、一緒にテレビでも見ようかな。半回転してテレビを見る。化粧品のCMが流れている。このクレンジングちょっと気になるんだよねー。今度買ってみようかな。でもやっぱり今使ってるのよりも高いからな。どうしよう。あー、つまらない。
頬をつつかれる感覚。銀ちゃんに決まっている。何、と言いながら彼の方を向く。突然、私の唇に当てられるのは銀ちゃんの唇。離すものか、とでも言うように私は彼の首に腕を回した。

「急だね」

「なまえが構ってほしそうだったから」

「…そんなこと」

「あるだろ」

「まあ…」

ぎゅうっと首を絞める。するとそのまま上体を起こされ銀ちゃんの膝の上に座った。なんだかちょっぴり恥ずかしい。顔を見られたくなくて肩に顔をうずめる。
構ってほしい、っていうのが伝わってしまった。この年にもなって構ってちゃんというのが、なんだか申し訳なく感じてしまう。でも寂しいからしょうがない!と開き直るには若さが足りなかった。ごめんね、と呟く。すると頭をぽんぽんと撫でられ、おー、と言われた。私が構ってちゃんなのは銀ちゃんにも理由があると思うよ。子供扱いするからいけないんだ。

「顔上げろよ」

「いーや」

「ちゅーできねェじゃん」

「テレビ見てなよ」

くく、っと喉を鳴らして笑われた。何でよ。むかついてきたので、顔上げて銀ちゃんの頬を摘んで伸ばした。上に横に下に回したり。それでも銀ちゃんは笑っている。もう少し力を加えてやったら涙目になった。ちょっと可哀想なので止めることにする。
また突然キスをされる。今日の銀ちゃんは可愛いなあ。いや、いつも可愛いけど、いつにも増して今日は特別可愛い気がする。

「ふふふ」

「なんだ?」

「可愛いね」

「大人をからかうのはよくねェな」

「ほんとのことだよ」

「余計悪ィわ」

ぐるん。銀ちゃんの顔と天井が目に映る。ソファーに寝かされたようだ。銀ちゃんは意地悪な少年のような顔をして笑っている。この顔がたまらなく好き。手を伸ばして頬を触る。すると銀ちゃんも私と同じように頬を撫でてくれる。指先に力を入れて顔を引き寄せる。そしてまた、キス。角度を変えてもう一度。テレビがぷつんと消された。ソファーの軋む音、時折漏れる声、リップ音。少し恥ずかしいけど、私だけに見せるこの顔が大好きなんだ。


暇だからキス



110918
一壱子



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