情熱的
渇いてる。私への愛はどうしてそんなにもドライなのだろうか。恋人同士というものは愛し愛され充実した毎日を送るものだと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。これは私たちだけなのか、それとも世間一般も同じなのかは分からない。
長いこと付き合うと慣れてしまい、新鮮味というのが無くなるのは仕方がない。でも、それでも、もっと幸せと感じられるものだと信じていた。同じようなことが毎日毎日繰り返されても、好きな人と過ごす毎日はそれは素敵なものだと思っていた。夢のような毎日だと想像していた。
「なんかねえ、違う」
「急にどうした」
「もうだめかな」
「銀さんついていけないよ」
「私たち終わりかなあ」
「は?」
テレビを見つめていた銀時の目は即座に見開かれ、私を驚いた顔で見ていた。少し怖い。だから怒っているのが分かった。冗談にならない冗談を彼は嫌う。でも、これは冗談じゃないからそんなに怒らないで。…って内容が内容だからしょうがないか。
テレビを消すと風の音が耳に入ってきた。体を撫でる温い風はちっとも気持ち良くなかった。じいっと銀時に見つめられると昔は恥ずかしくて目をそらしていたのに、今じゃもう慣れっこ。彼のように見開きはしないけれど見つめ返した。やっぱり違うんだよ。
「思ってたのと違うの」
「何が?」
「もっと、こう」
「んー」
「あった、か、銀時?」
「おー、続けて」
ぎゅうっと私を抱き締める力強い彼の腕。とても、とても心地良くて、温かくて。何よりも銀時の香りがすることで、とても落ち着いて、安心した。
だから言葉が詰まった。銀時と一緒に居ることに慣れてしまっていたのは私。だから、“終わり”だなんて思ってしまったんだ。こうやって二人の時間はあまり取れないけれど、それは仕方のないことで、銀時だってそれを望んでいるわけではないのだ。私を、好きじゃなくなったわけじゃない。まだ、こんなにも好きでいてくれている。私は、私は、大馬鹿者だ。
「俺はなまえが好きだ」
「銀時…」
「いつになったら分かんだよ」
「いつも態度で現してよ」
「人前でちゅーとか?」
「二人っきりの時がいい」
「…今そうだけど」
「…察しろ天パ」
天パは関係ねェだろ。少しだけむっすりした彼。それが可愛くてくすくす笑う私。ゆっくり顔が近付いて、おでこがくっついた。汗をかいてたらごめんね。鼻を擦り合わせて目と目がぶつかった。ああ、やっぱり、すごい好き。終わりなんて言って、不安にさせてごめんね。私を好きじゃないかもなんて疑ってごめんね。ただ寂しかっただけなの。構ってちゃんなの。ごめんねごめんね。大好きだ。
私から彼に噛みつくようにキスをした。こんなキスは久しぶりで、少し恥ずかしかった。けど、抑えられなかった。だって銀時がこんなに近くにいるんだもの。私は今までずっと幸せだったんだ。ううん。これからも、ずっと。
たまには情熱的に愛してよ
どんなあなたも好きだけど
110731
一壱子
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