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あー言われても、こー言われても、どー言われても、無理なものは無理なわけ。ぐーたらな銀時とは違って私には仕事があるし明日も早いの。まあ銀時も万事屋っていう仕事やってるみたいだけど。けどそういう気紛れな仕事とは訳が違くて、平日はちゃんと仕事あるし、給料だってちゃんと貰えるし、ノルマもあるの。至って普通のね。銀時みたいに一日ぼーっとやってれば終わる仕事や、血を見るような危険な仕事じゃないの。危ない仕事は私に隠そうとしてるみたいだけど、香る鉄の臭いで分かっちゃった。
兎に角私には暇がないの。仕事忙しくて構えなくて、連絡もほとんどできない。寂しいんだろうなあって思う。でも帰ってきたら疲れてるから直ぐに寝たいの。お願いだから分かってよ。

「ごめんね、行けない」

「どーしても?」

「ん、ごめん」

「ずっと会ってねェ気がする」

「会ったよ二週間前に」

私は二年会ってないような気がするけどね。口が裂けても言わない。甘えられないんだ。甘えちゃいけない。会いたくないわけじゃない。会いたくてたまらない。会いに行くときはちゃんと時間を作ってからじゃないと銀時とゆっくり過ごすことはできないんだ。耳元で聞こえる機械を通した彼の声。生のほうがもっと格好いいんだから。でもやっぱり少しだけ寂しそうだった。
携帯電話を肩で持ち珈琲を入れる。疲れた体に染みた。銀時は甘党だけど私はブラックしか受け付けない。だからたまに思うの。もしかしたら私は銀時とは釣り合ってないのかな。会う時間も作れないし、できることは電話くらい。彼にはもっと会った人がいるんじゃないのかなあ。
はあ。溜息が漏れる。すると銀時が心配してくれた。なんでもないよ、と明るい声で笑った。

「ごめんね、忙しくて」

「そ、だよなァ」

「‥ごめん」

「会いたくないわけじゃねェよな」

「そ、んな!」

びっくりして言葉が詰まった。珈琲を落としそうになる。ああ、今日は白のセーターだから染みになるところだった。でもまた落としそうだからテーブルに置いておこう。手が震えている。だって銀時が変なこと言うから。会いたくてたまらないのに。でも甘えられない。言葉にしたら絶対に我慢できないんだ。だから言わない。言えない。
会いたくないわけないでしょ。自分を落ち着かせるようにゆっくり言った。そっか、良かった。また寂しそうに言う。私は銀時に辛い思いをさせることしかできないのだろうか。時間さえできれば会いに行くよ。そうとしか彼に伝えられない。

「ま、仕事じゃな」

「ごめん」

「もう寝る?」

「眠たい?」

「いや全然」

「そか、良かった」

ピンポーン。呼び鈴が鳴る。こんな迷惑な時間にどこのどいつだか。銀時に謝って携帯電話の傍から離れた。私の大事な時間を邪魔するから少しだけいらいらした。だってたまにしか電話できないんだから。直ぐに玄関に向かう。さっさと用を済ませてほしかった。
どちら様?返事がない。覗き窓を見ると悪戯なのか手か何かで隠していた。こんな、子供みたいな悪戯するのは彼しかいない。まあ子供はここまで背が足りないけど。扉を思いっきり開けると携帯電話を耳に当てた銀時が立っていた。私は思わず飛び付いた。久し振りに感じる銀時はとても落ち着いた気分にさせてくれる。でも今夜は寝れないだろうな。明日のことを考えると苦笑いしかできなかった。


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電話だけじゃ物足りない



100202
一壱子



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あきゅろす。
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