Tricksters
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和洋と入れ代わりに入ってきた希楽は、シンプルな薄墨色の浴衣を身に纏い、ゆったりとした胸元にはプレートの付いたネックレスがぶら下がっている。先程スタイリストが宣言した通り、彼は和洋に負けず劣らずの色気を醸し出していた。
「希楽君もヤス君も良い男よねーっ!こんな彼氏が居たら鼻が高いでしょうねぇ。」
「安井ちゃん結婚してるじゃない。旦那さんに言ってやろうっと!」
「ちょっと遠藤さん!私が息子世代の子達に手を出す訳ないでしょ!?」
スタッフ達の盛り上がりも大きい。スタイリストの女性はまたしても満足げな顔で笑っていた。
「次、俺の番だから。よろしくな。」
「あ、はい!よろしくお願いします!!」
爽やかな笑みの希楽は社交辞令なのかどうかは分からないが、寧は挨拶を返す。彼が腰かけに座ると、取材がスタートした。
「――今回のツアーでお気に入りの衣装はありますか?」
「うーん……あ。ちょっとコスプレっぽいんだけど、アメリカの時の衣装かな。西部劇のカウボーイの格好なんですけど、何故かスタッフさん達から好評で。似合ってるって言われて、俺らも調子に乗っちゃってます。」
微笑を浮かべて語る希楽にシャッターが切られる。寧は彼の発言をメモし、質問を続けていった。和洋の時と同じように、逞しい胸元がやや気になるが。
「……よし、次はヤス君とのツーショットだな。呼んでくるから、二人はちょっとここで待っててね。」
カメラマンがその場を離れると、希楽が小さく「おい」と声をかけてきた。振り向いた寧は、至近距離に居た彼にドキリとした。
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