Tricksters
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「よーし!じゃあ、希楽君が着替えてる間にヤス君のソロショット撮っちゃおうか。伊藤さんは横から質問してくれて構わないんで、僕のことは気にせずお願いしますね。希楽君の時も同じように頼みますよ。」



 30代後半とみえるカメラマンの男性に言われ、寧は慌てて「はいっ!」と返事した。竹で作った腰かけの所へ向かう和洋と彼を追いかける寧を、希楽はチラリと視界に入れる。



「希楽君、次はあなたの番よ!ヤス君に負けないくらいかっこよくしてあげますからね!!」



 和洋の時と同様、やけに張り切っているスタイリスト。希楽は「よろしくお願いします」と微笑を浮かべ、もう一度だけ相方の方を振り返る。小さく溜め息をついて、彼はスタジオを後にした。



「――え、えーっと、ツアーの見所は何でしょう?」

「そうですねぇ……水を使った大掛かりな演出、かな。イタリアをイメージした曲の時なんですけど……ほら、ヴェネツィアって『水の都』って言われてるじゃないですか。」



 ぎこちなくなってしまう寧に、和洋はいつも通りに対応してくれる。数ヶ月共に仕事をしてきたのだから、彼女の変化にはきっと気付いているだろう。それでも干渉してこない彼に、寧は心で感謝した。


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あきゅろす。
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