Tricksters
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――アルバムが発売されると、音楽業界はにわかに活気付いた。イベントの特典映像が付いた初回版も、ボーナストラックが付いている通常版も飛ぶように売れる。寧は買うか買わないかを迷う暇もなく、先輩の沙伊花に有無を言わさず両方借りさせられた。彼女はやはり、トリスタの熱狂的なファンだ。
「お金が浮く分には良い、かな……」
ツアーが始まるまでの間、携帯用音楽プレーヤーに入れたアルバム曲を聴いて“予習”は欠かさない。音楽を聴きながらノートに書き溜めてきたフレーズをチェックし、寧はふと思い出す。
「そういえば、来週は浴衣姿の二人にツアーの様子についてインタビューするんだっけ……二人の話聞いてから、また続き考えようかな。」
５月には二人のファッションに対するこだわりを聞き、先月は“雨”に関する思い出とツアー稽古について尋ね、記事を書いた。どれも好評で、一部のトリスタファンからは“素敵な記事をありがとう”というお礼の手紙をもらった程だ。寧自身、とても満足している。
今月の取材日には、既にツアーが始まっている。普段と違う二人が見られるので、寧は少なからず楽しみにしていた。乙女なら、かっこいい男の浴衣姿を一度は間近で見てみたいと思うものだ。
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