Tricksters
77
 希楽達がブースに戻ってくると、再び室内には緊張が漂う。間もなくカップリング曲の収録が始まり、寧の視線は再び二人に釘付けになった。

 先程の悲しいムードとは打って変わって、明るいアップテンポの曲。ガラスの向こうの二人はとても楽しそうで、笑顔が溢れている。寧やスタッフ達も、思わず笑みをこぼした。



「今日はいつにも増して調子が良いなぁ、あいつら!記者さんのお陰だったりして。」

「ちょっと、やめて下さいよ!」



 照れて顔を赤らめる寧を見て、プロデューサーがワハハと声を上げて笑う。そのやり取りを眺めていたスタッフ達も、慌てる寧をクスクス笑った。幸い、ブース内に居る二人には気付かれていないらしい。寧は小さく安堵の息をついた。



「よーし、オッケー!お疲れさん!二人共、ツアー練習行ってこい!!ちゃんと休憩取れよ?」

「はい!ありがとうございました!!」



 元気よくそう返した彼らだったが、休憩と言える程の休憩も取らずにツアー稽古へ。寧は大丈夫だろうかとハラハラしつつも、二人の頑張りに自分も応えようと思った。勿論、“最高の記事を書くこと”で。


[*back][next#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!