Tricksters

 賑やかな街の一角にある、落ち着いた雰囲気のビルの5階。そこが“星彩社(せいさいしゃ)”である。そのたたずまいとは真逆の騒がしい声が響いたのは、午後3時過ぎだった。



「……えーっ!?先輩それ、本気で言ってるんですか!!?」

「当たり前よ!それとも何?あんたは私が任命した仕事を断る気?」



 大声で叫んだ寧に、沙伊花は眼鏡を直しながら詰め寄っている。寧は怯えながら、俯き加減に言った。



「そっ、そうじゃないですけど……本当に、私で良いのかなぁって。私、今まで散々迷惑かけてきたから、こんな大きな仕事がもらえるなんて……」



 ボソボソと呟く寧に向かって沙伊花は、ハァッと溜め息をついた。



「……そうね。普通なら二年経ったら一人での仕事がもらえるところを、あんたは更に一年かかったからね。」



 彼女の言葉に寧は、うっ、という図星の声を洩らした。



「まぁ、私はあんたなら大丈夫だと思ったから任命したのよ!良い記事を書くようになってきたし。
ただあんたは、喋りをもっと頑張りなさいね。インタビュー相手に気を使わせちゃおしまいよ!」



 沙伊花はそう言うと、頑張れの意を込めて彼女の肩をバシッと叩く。寧は途端に顔をしかめた。



「いったーい!!先輩、手加減して下さいよ!!」

「口答えするなら仕事から降ろすよ!!ほら、ボケッとしてないで、取材する相手について調べる!!」

「は、はぁい……」



 上手く丸め込まれた寧は、渋々自分のデスクに着いてパソコンを起動させる。検索ワードには、“Tricksters”と入力した。


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