Tricksters
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 初めてのレコーディングスタジオに、寧は圧倒された。Trickstersの密着取材に少し慣れてきたばかりなのに、一般人なら到底入れない“聖地”への入室を許可されたのだ。驚きや感激が入り交じり、言葉もなかった。



「伊藤さーん?感激してるところ悪いけど、ブース内までは入れないからね?常識的に分かってると思うけど、僕らと一緒にこっちの部屋から見学してもらうから。」

「は、はい!分かってますっ!!」



 危うく希楽達にくっついて、ブース内まで入っていくところだった。二人にクスクスと笑われ、寧は身を縮めて、スタッフ達が集まる調整室へ向かった。ガラス一枚で区切られた向こうでは、希楽と和洋が二つのスタンドマイクの前に立ち、スタッフの説明を受けながらヘッドホンを装着している。



「二人共、真剣そのものでしょ?普段は一般の同世代の子達と変わらないけど、仕事になると違うんだなぁ、これが!」



 自慢げに話すのはプロデューサーだ。デビュー当時から二人を支えているらしく、彼らの成長ぶりを大絶賛してくる。今回の楽曲は近々発売されるアルバムからカットしたもので、シングル用にアレンジしたものだという。ラジオで流した時に最も反響が大きかったので、思い切ってシングルカットに踏み切ったのだそうだ。ファン達にそれが伝えられるのは、おそらくツアーの終わり頃だろう。


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