Tricksters

「もー……何だよ希楽!その雑誌がどうしたって!?」



 和洋は仕方なくそれをパラパラとめくり、ふせんが貼ってあるページを開く。それは、ある女性アイドルのデビュー記念ライブのレポート記事だった。



「……この子って、何とか事務所の新人じゃん。お前、この子が好みなの?」



 和洋がクスッと笑って言うと、希楽は「まさか……」と嘲笑めいた笑みを浮かべる。



「そっちじゃなくて文章の方。俺が言いたいのは、記事を書いた奴だよ。」



 希楽がそう言うと、和洋はさほど興味もなさそうに、記事の内容に目を向ける。活字を追う相方を暫く眺めた後、タイミングを図って希楽は尋ねた。



「――どう思う?」



 和洋は雑誌から顔を上げ、希楽と視線を合わせる。そして、ニコリと笑って呟いた。



「……面白いじゃん、この人。もしかして、今度俺らの取材に来る、とか?」

「当たり!なかなか面白い文章書くよな、こいつ。」



 希楽はフッと笑うと、和洋の隣に座り、共にその雑誌を眺め始める。

 ――彼らはまだ知らなかったのだ。この記事を書いた人物が、後に自分達に大きく関わってくる、ということを。


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