Tricksters
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「よーし!30分休憩に入ろうか。希楽とヤス、昼飯食ってこい!!」

「へーい。行ってきまーす!」

「高津さん、今日の弁当何なの?」

「ハンバーグ弁当だってよ。」

「お、ウマそー!希楽、早く楽屋行こうぜ!!」



 二人はスタッフ達に挨拶をすると、何故か寧の方に向かってきた。唖然とする寧に気付いていないのか、二人は気さくに話しかけてくる。



「ね、昼飯まだでしょ?良かったら一緒に食べる?」

「一人で食べてもつまんないと思うから、俺らとで良ければ来ない?」



 返答に困っていると、スタッフから「何だー?お前ら記者さんと仲良しになったのか!」と声がかかる。二人はニコニコ笑って寧と肩を組むと、「俺達気が合うんですよー!」という営業スマイルを向けた。

 何か嫌な予感がした寧だが、半ば強引に二人に引きずられて行った。着いたのは何故か、プライベートな筈の二人の楽屋。目を白黒させている寧を連れ込んで、しっかりと鍵がかけられたのである。



「……こういうの、拉致って言うのよ?」

「ごめん、俺ら馬鹿だから分かんないや。」



「拉致じゃなくて“勧誘”だと思うけど。昼飯一緒に食おうって言っただけだし。」



 押し黙る寧に小さく笑顔を見せ、希楽と和洋はそれぞれの弁当を開封する。そして口々に「いただきます」と言って食べ始めた。

 寧も慌ててさっきひっ掴んできた鞄から小さな弁当箱を取り出し、「いただきますっ!」と言って中身を口に運び出した。



「……寧ちゃん、それで足りんの?少なすぎじゃね!?」



 和洋が驚いた声を出し、しげしげと寧の弁当箱を覗く。言われた本人は、ポカンとして彼を見つめていた。



「……ヤス。寧、女だから。しかも見るからに小食そうだし。」

「あぁそっか!俺を基準に考えてた。」



 二人はクスリと笑んで、寧に目をやった。真意は全く汲み取れない。


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あきゅろす。
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