Tricksters
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 ――脅しに思わず悔恨の唾を呑む。自分が仕事大好き人間だということが弱みになるなんて、まさか思いもしなかった。

 嫌ならこの野獣達を振り払えば良い筈だが、そうすれば折角辿り着いた場所を失くしてしまう。やり甲斐ある仕事・仲良くしてくれる同僚・厳しくも優しい上司達。手に入れた楽しさ全てを、失ってしまうのである。



「……時間ないんだから早く終わらせてね。」



 ニヤリと笑う狼二匹。屈辱だ。唇を噛み締めて俯いていると、黒髪赤メッシュの男に顎をクイッと持ち上げられた。



「自分が“玩具”だって自覚、ちゃんと出来たみたいだな。可愛がってやるから安心しろよ。」



 切れ長の鋭い目に自分が映っている。気を抜けば飲み込まれてしまいそうだ。



「希楽、この前みたいに気絶させんなよ?いくら軽くても、人を運ぶのは面倒なんだから。」



 隣でクスクスと笑っている灰色の瞳と目が合う。こちらも吸い込まれてしまいそうな不思議な目だ。和洋は妖艶に微笑うと、相棒と視線を合わせた。

 ――二人の気持ちが同じだったのだろう。寧の体は、二つの腕によって机の上に押し倒されたのだった。


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あきゅろす。
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