Tricksters
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「……そうね。私の上司にまで手を回す汚い人達だってことは、一生忘れないと思います。」

「汚い?賢いって言ってよ。」

「正しくは“ずる賢い”だと思いますけどね。むしろ“卑怯”だと。」



 睨み付ける寧と不敵に笑う和洋を横目に、希楽は「言うようになったじゃねぇかよ……」と呟き、クスリ、妖しく笑った。

 徐々に怒りを露にする寧を見て、二人は益々嬉しそうに口の端を上げる。それに耐える彼女の態度さえ、楽しんでいた。



「……何がおかしいんですか?」



 語尾が震える。鼻の奥がツーンと痛む。目の前の男達は「泣くの?泣くの?」と静かにはやし立ててくる。

 寧は歯を食い縛り、拳で目頭を乱暴に拭った。気持ちだけでも強く持たなければ……そう思って、二人を正面から見据えた。



「……泣かないわよ。三年待ってやっともらえた大仕事がコレなのは不本意だけど、それなりに楽しみにしてたんだからちゃんと仕事はさせてよね!今日はさっさと終わらせて帰るから、笑ってないで質問に答えて!!」



 二人は、大きく目を見開いていた。てっきり、泣くか喚くかだろうと思っていたのだ。

 ――面白い。二人はニヤリと笑みをこぼした。


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あきゅろす。
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