Tricksters
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 マグマのように煮えたぎる憤りを抑えて、寧は二人を見やる。その顔は、怒りで僅かに歪んでいる。それを目にした二人は、それぞれほんの少しだけ反応を見せた。和洋は目を丸くし、希楽は片方の眉をピクリと上げた。



「……あんなことしといてよく平然と居られますね。私が火山だったら今頃噴火してますよ?」



 淡々と語る彼女の様は、怒鳴るより何よりも効果的だった。これまでに体験したことのない感情のせいか、口には微笑さえ浮かんでいる。希楽と和洋は、寧の怒りが頂点に達しているのだと悟った。



「……仕掛けたのはそっちだろ?君が俺らからネタ掴もうなんて思わなかったら、こんなことにはならなかった筈だけど。自業自得だろ。」



 冷笑する希楽は、和洋に同意を求めるようにその顔を見つめる。和洋は無言で小さく頷いた。口角が僅か、ニヤリと上がっている。



「ていうか、寧ちゃんも楽しんでたじゃん。忘れたとは言わせないよ?まぁ、寧ちゃんが忘れたところで俺らはしっかり覚えてるけどな。」



 細く尖った三日月のようになるグレーの瞳が憎らしい。叫びたくなるような衝動を鎮めるためか、寧は深く息を吸い、ゆっくり、ゆっくりと吐き出す。長く静かな音が、部屋に響いた。


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