Tricksters
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「――じゃあお二人は、今回のツアーは47都道府県を全部回るんですね。聞いただけでも凄く大変だと思うんですが、何か不安はありますか。」

「……おいおい寧、口調がさっきからカンペ棒読みだぜ?感情が込もってないんだよ。なぁヤス?」

「ほんとほんと!寧ちゃん記者で良かったね?役者だったら完全にアウトだし。」

「名前で呼ばないで下さい。二人は今回47都道府県を全部……」

「あー……分かったから。悪かったって。“伊藤さん”って呼べば良いんだろ?」



 面倒臭そうに言った希楽を不機嫌な顔で見て、寧は小さな溜め息を一つ、ハァッとついた。今彼女は、夏のライブツアーを前にした二人の取材をしているところである。

 先日の事件以来すっかり二人を警戒している寧は、彼らに対して腹を立てている。加えて、会社の人間達にTrickstersの取材担当を変えてもらえなかったことに失望しているのだった。

 そんな彼女に何も気付かない、「ねぇ、何でそんな怒ってんの?」と尋ねてくる和洋。続いて希楽も、「ほんとだよ。この取材って楽しい内容の筈だけど」と言う。それを聞いた寧はピクリと眉を上げた。まるで「そんなことも分からないの?」と言っているようだった。


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