Tricksters
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 到着したのは、落ち着いた雰囲気の和食の店。希楽が連絡を入れておいてくれたのか、三人はすぐ、奥の座敷の部屋に案内された。

 セットメニューで鍋のコースを頼み、野菜たっぷりの鶏ガラスープの鍋をみんなでつつく。ある程度お腹が膨れてきたところで、希楽が席を外した。寧の背中に緊張が走る。和洋は、これから話すことについてどう思うのだろうか、と。



「あのね……単刀直入に言うけど、私と別れて欲しいの。」

「えっ!?どうしたの、急に……」

「ヤス君、私と但馬さんの間で悩んでるんでしょう?この前、偶然二人で居る所を見ちゃったのよ。まだ未練があったから、ああいう行動に走ったんだと思うけど……」

「違う!あれは、その……」



 一時の気の迷いだったとしても、えれなは以前、和洋が交際していた女性。無意識の内に面影を求めていてもおかしくはない。寧は、そう思ったのだろう。

 いや……むしろ、そう思いたかっただけなのかもしれない。自分が納得できるだけの理由を、勝手に作っておきたかっただけなのかもしれないのだ。



「寧ちゃん、違うんだ!あれは……」

「見苦しいぞ、ヤス。さっさと認めて謝れよ、浮気しましたって。」



 いつの間に、希楽が居たのだろう。驚く和洋と寧をよそに、アンティークゴールドの髪をした男は、そのハスキーボイスで静かに続ける。



「正直言って、ずっとお前らのこと心配してた。つーか、俺は一生口出さないでいるつもりだった。
でも……悪いけど、もう無理だわ。」



 そう口にして、わざとらしい程の大きな溜め息を響かせた希楽。その手は、何の迷いもない動きで、寧へと向かっていった。



「……ヤス。大事にしねぇんなら、こいつは俺がもらうから。」


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