Tricksters
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「……寧。それ、俺もついてって良いか?」

「え、何で希楽が?」

「何だよヤス、“部外者は来んな”ってことか?
ただ、この三人で仕事以外で会ったことねぇなって思ってさ。二人が嫌なら帰るけど。」



 小さく笑いながら問う希楽。その微笑で、今の台詞が彼の優しさなのだと悟った。

 多分希楽は、自分が和洋に別れを告げることを勘付いている。そのことに対する緊張を、きっと少しでもほぐそうとしてくれているのだろう。そう思うと、とても有難かった。



「……ヤス君、私は大丈夫。希楽君には、少し席を外してもらうことになるかもしれないけど。」

「そうなの?なら良いよ。」

「お、じゃあ俺も行くわ。席外すのは全然構わないって。俺が勝手に混ざったんだし。
そういや、行く店って決まってんの?まだなら、俺とヤスがよく行く所にしねぇ?」

「あ、良いねー!寧ちゃん、それで良い?」

「そうね……じゃあ、そうしましょうか。」



 希楽が加わったことで、スムーズに事が運んだ。密かに洩れた溜め息で、安堵したのだと自覚する。

 希楽は相方のことも、その彼女である寧のことも心配してくれているのだろう。彼の車で店まで行く間、助手席の和洋と後部席の寧へ交互に話しかけてくれた気遣いが、それを物語っていた。


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