Tricksters
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 行き着いたのは、喧騒から離れた小高い丘。都会の中にひっそりと存在する田舎のようで、不思議と心が休まっていく。加えて、今の時間帯は夕暮れ時。昼と夜の間の世界の色が、寧を感動させてくれた。



「落ち着くだろ?」

「……ええ。東京にも、こんな場所ってあったのね。」

「探せばきっと、まだまだあるんじゃねぇか?俺達が気付いてないだけで。」



 涼しい表情で、自分の目も見てこないで口にした希楽。その横顔を見つめながら、思う。

 彼はどんな気持ちで、自分をここに連れてきたのだろうか。相方に対する怒りは治まっただろうか。自分はあの時、やはりあの二人の前に出ていって、何か言うべきだったのだろうか。様々な思いが、寧の中を駆け巡った。



「……ありがとう、希楽君。お陰様で、大分落ち着いたわ。」

「そうか?なら良かったけど……これからどうするのか、ちゃんと考えろよ。」



 “自分が何とかしてやる”ではなく、寧自身でしっかりと悩んで決断するように。ただし、迷った時には力になる。希楽はそう続けた。

 こんな時、和洋なら“自分に任せろ”と笑顔で言うのだろう。そんな考えが浮かんで、ハッと息を飲む。無意識の内に二人を比べようとしている自分に気付き、嫌悪を抱(いだ)いたからだ。

 希楽にとっても、和洋にとっても失礼な行為だ。“今はまだ考えがまとまらないから”といっても、結局は答えを出せないことへの言い訳にしかすぎないだろう。いくら年をとっても、人間は何処かずる賢い生き物なのかもしれない。



「……時間はかかるかもしれないけど、頑張ってみるわ。」

「良いんだよ、いくらでも時間かけて。すぐに答え出せる天才みたいな奴、そうそう居ねぇから。」



 切れ長の視線が、ようやくこちらを向いた。温かい掌が、髪を撫でてくる。目を閉じたくなるのがそのぬくもりのせいなのか、はたまた心地良い風のせいなのか。寧にはよく分からなかった。


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