Tricksters
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 聞き覚えのある甘ったるい声は、確実に但馬えれなのものだった。和洋と一緒に居るということは明白だが、何故彼女がここに……というのは分からない。思わず、少しだけ開いているドアの隙間から、中を覗いてしまう。



「……何だよそれ。俺、もう相手が居るんだけど。」

「あのお姉さんでしょ?知ってるわよ、そんなこと。でも、それでもあんたが良いの……」

「無理。もうお前に興味ないし。」



 ドライにかわそうとする和洋だが、えれなが怯むことはない。壁にもたれて腕組みしている彼の前に立った彼女は、必死の形相で相手を繋ぎ止めようとしている。



「何でなの……?確かにあたしは我儘だったかもしれないし、子供っぽかったかもしれない。でも、悪い所があるなら直すから!」

「……そういうの、ウザいんだけど。俺には寧ちゃんが居るって言ってんじゃん。いい加減にしろよ。」



 冷たい言い方をされて表情を曇らせているえれなは気の毒だが、だからといって和洋を譲るということはありえない。“早くこの重苦しい会話が終わらないか”と願っていた寧。そんな中、不意にこちらへ視線が向けられた。

 ――女豹が敵意を露にして、わざと微笑んだ。そんな気がした。


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