Tricksters
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 数日後、寧は先日トリスタの二人を取材した会社に、写真のチェックをしに出かけた。希楽と和洋の撮影には立ち会えなかったので、写真だけカメラマンも交えて選ぶということになっているのである。

 寧が小さな会議室に到着してから数分後、トリスタの二人とカメラマンが現れた。「お待たせしてすみません」と言いながら、早速写真をテーブルに広げてくれるカメラマンの市ヶ谷という男性。それを和洋達と一緒に眺めながら、どれが良いかと話し合う。



「カメラマンとしては、ソロはこれとこれ。ツーショットはこれが一番かなと思うんですが……お三方はどうですか?」

「あ、私も市ヶ谷さんと同じ意見です。このツーショットなんて凄く楽しそうで、雑誌を見た時に喜ぶファンの方達の顔が目に浮かびますよね。」



 二人に言われ、希楽と和洋は“二人がそういうなら”と、彼らの意見を受け入れた。自分達もそれが良いと思っていたので、実は内心驚いていたのだという。



「いやぁ、トリスタとの仕事は写真選びがスムーズだなぁ!これが我儘なグラドルだったりすると、そうはいかないんですよね。撮り直しは自分を良く見せるために当たり前だけど、気が乗らないから他の子使ってくれなんて言われた時はガックリくるんですよー……」

「え!そんなことがあるんですか!?」

「あ、伊藤さんはまだそういう子を取材したことないんですね。幸運ですよ。
まぁ、編集者の方相手にそんなことするのはまず居ないだろうけど……ドタキャンしたり、連絡なしに遅刻してきたり、常識がなってない子って居るんですよね。」



 苦笑する市ヶ谷を見て、希楽と和洋は「俺達もたまにそういう話聞きますよ」、「俺らはしないけどね」と口にする。寧は、時間厳守のしっかりした芸能人ばかりを取材できていることを、改めて有難く思った。



「時間余っちゃいましたねぇ……折角だから、僕ケーキでも買ってきますよ。三人共、何かリクエストは?」



 市ヶ谷の提案に頭を下げると、希楽はチーズケーキ、和洋はモンブラン、寧は何かフルーツを使ったものをと頼んだ。寧が、差し入れに持ってきた紅茶パックの詰め合わせがあるから出させて欲しいと告げると、市ヶ谷は「ありがとうございます!」と笑んで給湯室の場所を教えてくれた。


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あきゅろす。
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