Tricksters
136
 トリスタの、短い夏休みの最後の日。それは、寧と和洋がお家デートをした日だった。思い出して、記憶をゆっくりと辿っていく。

 特に何をするという訳でもなかったのだが、和洋が寧の住むマンションに来て、彼女の作ったご飯を食べ、好きな音楽を聴きながら過ごした。日が落ちてきたら愛し合って、翌日はお互いの仕事の成功を願いながら別れたのだった。忙しい身の二人にとっては、普通の恋人達には当たり前のことでも、かけがえのないものに思えるに違いない。



「……ちょっと寧ちゃん、脳内旅行してない?俺の話、ちゃんと聞いてる?」

「え!?あ、ごめんなさい……」

「おいおい、大丈夫かよ。遅すぎる夏バテか?」



 慌てて取材を再開する寧を見て、ケラケラと笑う和洋と希楽。出会った頃の刺々しさや、人を小馬鹿にしたような感じは、もう全くない。つられて笑い出した寧は、壁の向こうから「隣、楽しそうね」という声を聞いて、いっそう心が温かくなった。

 親しげな雰囲気の中、取材は終了。挨拶を交わして部屋を出た三人は、トリスタのマネージャーである工藤と合流。少し立ち話をしてから、寧は撮影スタジオを後にした。


[*back][next#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!