Tricksters
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 涼風が頬を撫でる、過ごしやすい季節となった。10月になり、紅葉した山々が各地で観光客を賑わせるようになった頃。寧は相変わらず、トリスタの専属記者として働いていた。

 彼らの担当になって、もう半年。二人のこと、特に和洋のことには詳しくなったつもりだ。朝食には温かいご飯がないと気が済まないこと・帽子が好きで沢山コレクションしていること・寝起きの掠れた声がとてつもなく色っぽいこと……思い出すとニヤけてしまうくらい、和洋のことが好きになっていた。

 ツアーのためずっとハードスケジュールだった希楽と和洋も、一週間のオフをもらってリフレッシュしたらしい。本日の取材はそんな二人へ、“今年は●●の秋”というテーマで、今秋の過ごし方・ツアーを終えての新たな目標・最近ハマっていることについて質問するというものだった。



「希楽君もヤス君も久し振り!短い夏休み、有効に活用できましたか?」

「はい、まぁボチボチって感じですね。俺、最初の三日間は風邪で寝込んでたんで……」



 苦笑する希楽に対し、「えっ!大丈夫だったんですか!?」と寧。だが、「回復後は、友達とバーベキューしたり、家族で避暑地に出かけたり、思う存分楽しみました」の返答を聞いて、安心したらしかった。



「ヤス君はどうでした?希楽君みたいに体調崩してなかったら良いんですけど。」

「あぁ、俺は平気でしたよ。高校からの友達とサーフィン行ったし、花火もしたし……家族とは家でしゃぶしゃぶやりました。一番楽しかったのは、夏休み最終日ですけどね。」



 ――細められたグレーの瞳。からかうようなその視線で、背中がピンとなった。


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あきゅろす。
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