Tricksters
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 ――これは幻などではなく、手が届くリアル。それを確かめるように、二人は何度も何度も名前を呼び合い、肌に触れ合った。まるで彼らの間に1ミリの隙間も存在してはいけないとでもいうように、少し焦げた肌と透き通った柔肌がしきりにぶつかっている。



「寧、ちゃん……」

「ン、あ、ヤスくんッ……!」



 最中にしか聞けない熱の隠った声で互いの名前を呼び、それが益々気持ちを高ぶらせる。押し殺していた感情が溢れ出したら、この行為の終わりが惜しくなる。もっとずっと繋がっていたい。そう思うのだが、体は快感の頂点を迎えようとしていた。

 内部から沸き上がってきたどうしようもない快感心が弾け飛ぶと、頭の中が一瞬真っ白になる。次いで、和洋の熱い液体が体内に注がれる。ビクビクと跳ねる彼の肉棒に貫かれながら体を震わせて、寧はエクスタシーに陥っていた。



「……寧ちゃん、体大丈夫?」



 恍惚に浸ったままで動けない寧を心配し、和洋が優しい声音で問いかける。この気だるさは鬱陶しいというより、むしろ心地良い。思いが通じ合った嬉しさに頬を緩ませて、寧は隣でうつ伏せになっている彼の逞しい腕にスルリと絡み付いた。

 ――無言だったが、思いは和洋へ伝わったに違いないと、寧は思った。その証拠に、隣に居る男が「そっか」と言って穏やかに笑っている。二人はまた暫く、お互いの体温を感じ合っていた。


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